top of page

誤嚥性肺炎は、5つのことをすれば予防できる。

  • 1月5日
  • 読了時間: 6分

1. はじめに:ご家族の不安を希望に変えるために

ご家族が誤嚥性肺炎で入院されたとのこと、さぞご心配なこととお察しいたします。

「また肺炎を繰り返してしまうのではないか」「もう口から食べることはできないのだろうか」といった不安は、多くのご家族が抱えるものです。

しかし、その不安は、正しい知識と具体的な対策によって、希望に変えることができます。この記事では、嚥下障害の治療とリハビリテーションを専門とする立場から、誤嚥性肺炎を予防するために「今日からできる5つのこと」を、分かりやすく解説します。

一つひとつを実践することが、ご家族の「食べる喜び」と「穏やかな日常」を取り戻すための、確かな一歩となります。




予防法1:栄養状態の改善こそが、最強のリハビリ


誤嚥性肺炎の予防において、最も重要でありながら見過ごされがちなのが「栄養」です。

なぜなら、「食べさせること」自体が、最も効果的なリハビリテーションだからです。


低栄養 状態に陥ると、嚥下(飲み込み)に関わる 筋力低下 や、感染症と戦うための 免疫力低下 を招きます。すると嚥下機能がさらに悪化し、ますます食べられなくなるという悪循環に陥ってしまいます。


逆に、しっかりと栄養を摂り体重が増えると、嚥下機能が劇的に改善することがあります。


痩せて喉の内部が広がってしまうと、まるで大きな風船を膨らませるように、飲み込むためにより多くの力が必要になります。


体重を増やし、喉の空間を「小さな風船」に戻すことで、今ある筋力でも効率よく圧力を生み出し、力強い嚥下が可能になるのです。


また、脂肪がつくことで声門の上にある「仮声帯」というヒダが厚みを増し、物理的に隙間を埋めてくれる効果もあります。


まずは体力を回復させ、嚥下機能を向上させる土台を作るために、十分な栄養確保を目指しましょう。日本の大規模な研究では、高齢者の場合、BMI(Body Mass Index)が25~29程度の少し高めの方が、肺炎による死亡リスクが最も低く、総死亡率も低いことが示されています。


3. 予防法2:唾液や食べ物の誤嚥を防ぐ「安全な姿勢」


誤嚥を防ぐ上で、食事の形態と同じくらい重要なのが「姿勢」です。特に、私たちが推奨しているのが**「完全側臥位(かんぜんそくがい)」**という姿勢です。これは、体を真横に向けて寝る姿勢のことで、重力を最大限に活用する極めて安全な方法です。


  • 重力を味方につける:  この姿勢をとると、食べ物や唾液は重力によって気管の方向ではなく、喉の側面にある「咽頭側壁(いんとうそくへき)」という安全なポケットへと自然に流れていきます。

  • 万が一の場合も安心:  もし少量の食べ物や水分が気管の入り口(喉頭侵入)に入ってしまっても、この姿勢なら重力によって外に排出されやすくなります。気管の奥深くへ流れ込むのを防ぐ、二重の安全策となるのです。

唾液の誤嚥を防ぐ:  肺炎の大きな原因は、食事中だけでなく、睡眠中などに無意識に流れ込む唾液の誤嚥(持続的唾液誤嚥)です。

安静時や就寝時にもこの姿勢を保つことで、この見過ごされがちなリスクを大幅に減らすことができます。「完全側臥位」は、誤嚥のリスクを最小限に抑えながら、安全に食事や休息をとるための基本となる姿勢です。


4. 予防法3:肺炎のリスクを減らす「口腔ケア」


誤嚥性肺炎は、「誤嚥」そのものと、「口の中の細菌」という二つの要素が合わさって発症します。誤嚥をゼロにすることが難しい以上、もう一つの要素である細菌を減らすことが極めて重要になります。


口の中が汚れていると、唾液には無数の細菌が含まれることになります。その細菌だらけの唾液を誤嚥すれば、肺の中で細菌が繁殖し、肺炎を発症するリスクは格段に高まります。


口腔ケアによって口の中を常に清潔に保つことは、万が一誤嚥してしまった場合でも、肺に入る細菌の量を減らし、重篤な肺炎に至るリスクを低減させるための、重要な「防御策」なのです。これは、ご家族ができる最も効果的な感染対策の一つです。


5. 予防法4:「なぜ誤嚥するのか」を知るための専門的な評価


「むせるから、刻み食にしよう」「念のため、ずっと禁食に」といった憶測や自己判断は、時にご本人を不必要な苦しみへと追い込むことがあります。

専門家による評価は、制限を増やすためではなく、むしろ 不要な制限から解放される ために行うものです。


そのための最も強力なツールが、**嚥下内視鏡検査(VE)**です。これは鼻から細いカメラを入れ、喉の動きや食べ物の流れを直接観察する検査です。これにより、「何が、どのタイミングで、なぜ誤嚥するのか」という根本原因を正確に突き止めることができます。


正確な評価は、安全に食べるための「地図」を手に入れるようなものです。この地図があれば、闇雲な食事制限(禁食)という袋小路から抜け出し、「この形態の食事なら、この姿勢で安全に食べられる」という、希望に満ちた道筋を見つけ出すことができます。それは、食べる楽しみを取り戻すための、最も確実な第一歩です。


6. 予防法5:食べる力を取り戻す「適切なリハビリ」


嚥下機能は、適切なリハビリテーションによって維持・改善が可能です。

リハビリには、舌や唇の運動など、食べ物を使わずに行う**「間接訓練と、実際に食べながら行う 「直接訓練」**があります。

間接訓練も大切ですが、最も効果的で本質的なリハビリは、 「安全な方法で食べること」そのもの 、すなわち直接訓練です。

食事は、嚥下に関わる全ての筋肉を、最も自然で機能的な形で使う最高のトレーニングなのです。「危ないから食べさせない」という選択は、最も重要なリハビリの機会を奪い、機能低下を招くだけです。

「どうすれば安全に食べられるか」を専門家と共に考え、実践し続けること。その繰り返しが、ご本人の「食べる力」を再び呼び覚まします。食べることはリスクではなく、回復への確かな道筋なのです。


7. まとめ:今日からできる5つのこと


誤嚥性肺炎の再発を防ぎ、ご家族の「食べたい」という願いを支えるために、今日からできる5つのことを改めて確認しましょう。


  1. 栄養状態の改善 :まずは体重を増やし、体力をつけることから始めましょう。栄養こそがすべての基本です。

  2. 安全な姿勢の徹底 :「完全側臥位」を基本とし、食事中も安静時も誤嚥のリスクを減らしましょう。

  3. 口腔ケアの実施 :口の中を清潔に保ち、万が一の誤嚥に備える「防御策」を徹底しましょう。

  4. 専門家による評価 :憶測での制限を避け、嚥下内視鏡検査などで「安全に食べられる方法」を見つけ出しましょう。

  5. 適切なリハビリの継続 :安全な方法で「食べ続ける」ことこそが、最高の機能訓練になります。


8. 最後に:あなたは一人ではありません


ご家族の介護やリハビリテーションは、時に孤立感を感じることもあるかもしれません。しかし、同じように悩み、そして乗り越えてきたご家族の実話が、きっとあなたの力になります。

以下のページでは、多くのご家族の体験談をご紹介しています。ぜひ一度、ご覧になってみてください。

▼ご家族・患者様の声はこちら▼ https://www.safe-swallow.com/family





お問合せ

株式会社甲南医療器研究所

完全側臥位法アドバイザー

前田悟


 
 
 

コメント


bottom of page