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「もう充分生きたでしょう。歳だから。」と言われたら、あなたはどうしますか?

執筆者の写真: 前田悟
前田悟
10月11日
読了時間: 8分

更新日:5 日前


三重県在住の55歳女性のエピソードです。


「もう十分生きたでしょう」「歳ですから」

面会に行くたびに父は、飲みたい食べたいと訴えてます。 食べることが大好きだった父にもう一度口から食べさせてあげたいと看護師に言った時に言われた一言で、頭が真っ白になりました。



83歳の父親が誤嚥性肺炎で入院しました。

仕事をしているため週末にしか面会に行けない中、治療が終われば元気に退院できると思っていました。

しかし、口から食べることを禁止されてしまいます。父の「食べたい、飲みたい」という願いを叶えたいと思い、看護師に相談したときのお話です。


入院前日、大好きな鯛の刺身を一緒に食べ、何気ない日常を過ごしていました。

翌日、午前中に高熱が出て意識が朦朧としたため救急車を呼び、そのまま入院となりました。誤嚥性肺炎による2度目の入院です。前回は10日ほどで退院できたため、今回もすぐに退院できるものと思っていました。


「家に帰ったらまた刺身を食べたい」

投薬治療中も、「家に帰ったらまた刺身を食べたい」と話していました。しかし、治療後の嚥下検査で誤嚥リスクが高いことがわかり、嚥下訓練を行うことになりました。言語聴覚士の先生が病室に来てくださり、リハビリについて説明してくださいました。「まずは食べ物を使わない間接訓練から始め、飲み込む力がついてきたら水やゼリーを使った直接訓練に移行する」とのことでした。


3つの管

入院して1ヶ月後、再び嚥下検査が行われました。医師からは「誤嚥リスクがあるため、口から食べるのは無理です」と告げられ、さらに看護師からは「3つの管のうちどれにしますか」と尋ねられました。胃ろう、経鼻経管栄養、中心静脈栄養の3つを挙げられましたが、突然のことでそれぞれの違いもよくわかりません。結局、言われるがまま中心静脈栄養を選択することになりましたが、本当にこれで良かったのか今でも不安が残っています。


それでも、父は「水が飲みたい」「口から食べたい」と訴えます。医療のことはよくわかりませんが、本当にこのままもう何も食べられないのでしょうか。父の姿を見るたびに悩んでしまいます。家族で話し合い、「もう一度口から食べられないか、医師に相談しよう」ということになりました。




「もう十分生きたでしょう」「歳ですから」


しかし、その思いを看護師に伝えたところ、「もう十分生きたでしょう」「歳ですから」と言われてしまいました。一瞬、何を言われているのか理解できませんでした。「ここは家族の気持ちを考えてくれない」「全然寄り添ってくれない」と感じ、胸が締め付けられる思いでした。


父はまだ83歳です。

もう十分生きたのでしょうか。

年齢のことを言われれば、確かにそうかもしれません。

それでも、本人が「食べたい」という強い意欲を持っているのなら、何とか食べさせてあげたいのです。


朝起きてすぐ、通勤中、昼休み、帰宅中、食後、お風呂上がり、寝る前……。

私はスマホで検索し続けました。


寝て食べる

そしてある時、寝て食べている動画を見つけました。



それは私にとって大きな衝撃でした。

食事は座って食べるものと思い込んでいました。

寝て食べるなんて、それまで見たことも聞いたこともない食べさせ方だったからです。




「ひょっとしたら、うちの父もまだ食べられるのではないか」


関連情報を調べていくうちに、「ひょっとしたら、うちの父もまだ食べられるのではないか」という希望が湧いてきました。

面会時に内緒で動画の姿勢をしてみました。動画を見ながら父の食べている姿を想像しました。


思い切って、担当の看護師に相談したところ、「寝て食べたら誤嚥する」の一点張りで、聞く耳を持ってもらえません。



それでも諦めきれませんでした。


おそるおそるホームページの問い合わせから電話をかけました。

気が付くと、1時間ほど話していました。話していると何だか食べられるように思い電話を切ると希望が湧きました。


そして、母と相談し父を自宅連れて帰りもう一度完全側臥位で食べさせてあげたいと思いが一致しました。そして、完全側臥位法アドバイザーにサポートしてもらうことに決めました。


退院に向けて 

アドバイザーは「在宅介護するには、在宅医により体調を管理してもらうことと、訪問看護による医療的サポートをしてもらうのが必要です。できたら完全側臥法を実施している医療従者が見つかれば安心なんですが、見つからない時は完全側臥法を理解してくれる在宅医や訪問看護を探すように」と言われました。

入院前に診てもらっていた。在宅医に相談したところできないと言われ、ケアマネージャーに相談し在宅医を探してもらいいました。3人目の在宅医にいただいた完全側臥法の資料を手にして面談をしました。

在宅医は完全側臥法をご存知はなかったけど、理屈はわかったので、食べることに関しては、完全側臥位法アドバイザーの指示に従うように。それ以外の体調管理は任せてくださいと言われ、在宅医が信頼している訪問看護と医療チームを作ることができました。



口から食べるための準備

教えていただいた唾液誤嚥予防の回復体位をとりやすい「回復体位クッション」、完全側臥位で安全な喉を保持しやすい食事枕「ふたこぶラックン」を用意しました。


父の場合、入院中に回復体位を取り口元から唾液がよだれとして出てくるのを確認していてため、唾液誤嚥予防は間違いなくできます。ただ、「完全側臥位で必ず口から食べられる保証はありません。」と言われました。「しかし、食べられる可能性は十分あるので、安全を最優先して一歩一歩確認しながら、食べましょう。」とアドバイザーに言われました。


前日は、「バスタオルやヨーグルトをテーブルに並べながら少し手が震えたけれど、母と父が『明日のご飯の話をしている』様子に胸が熱くなりました。



いよいよZoomの当日です。

この日を迎えるまでに、疑問に思ったことや在宅医が見つからず悩んだことなどアドバイザーとLINEで何回もやり取りをしました。

父と母と私は、食べられたらいいな、やっぱり食べられないかなととても緊張しました。



Zoomが始まりました。

スマホをもってベッドの周りを動いて足元や頭の方から全身を見てもらいました。父の顔と同じ高さにスマホを持っていき真横から喉の位置を確認してもらいました。

完全側臥位の姿勢を見てもらい「いい姿勢ですね。」と褒めて頂き少し嬉しくなりました。


口の中を見て、舌の動きを確認し、喉のゴロゴロも聞こえない。

いよいよ口から食べる時が来ました。

はやる気持ちを抑えながらスプーンのイメージトレーニング

座る位置を確認し、「お父さん、今からお水を入れるよ」



「飲み込めました。」


大きな口を開けて、スプーンひとさじの水が口に入りました。

口をすぼめたり、への字になったり口からのどに送り込もうと必死です。頑張れがんばれと心の中で叫びました。隣の母も同じです。そして、半年ぶりにごくりと水を飲み込みました。

「飲み込めました。」と思わず声が出てうれしくてうれしくて。


Zoom越しに「もう一口いきましょう。」と促され、ごくり。

「のどぼとけの動きを見てください。大きく動いた時に飲み込んだこ

とになります。もう一口いきましょう。」のどのゴロゴロもなく3口飲み込めました。父の口元が緩んでいるように見えます。毎日飲みたい食べたいと言っていた父の願いが叶えられた瞬間でした。


次はとろみ水です。とろみ水をすくってスプーンを持ち上げて傾けてとろみ具合を確認してもらい。口に入れました。水の時より少し早く飲み込めたように思えました。

2口飲んだ後、ヨーグルトに挑戦することになりました。


牧場の朝は日本全国ほぼどこでも手に入れることができ、とても安価でよく混ぜると理想的な中間とろみになるとアドバイザー一押しのヨーグルトです。


そしてスプーンでかき混ぜトロトロにしたヨーグルトを口に入れるととろみ水の時より若干遅くごくりと飲み込めました。

そして、「美味しい」と言ってくれました。思わず母と抱き合い涙が止まりませんでした。

今まで、水すら飲むことを禁止されていたのがウソのようです。

完全側臥になるとごくりと嚥下反射が起こるまでむせない、喉がゴロゴロしないと言われたことが本当だと確信しました。

アドバイザーが、「重力と喉の構造を理解すれば、口から食べられる方が多くいる。」と言うことが体験でき自信がつきました。


あきらめない


看護師さんから「もう十分生きたでしょう」「歳ですから」と言われ、一度は諦めそうになりました。

でも諦めずにいて本当に良かったです。もしあの時に諦めていたら、父が「美味しい」と喜んで食べる姿を見ることはできませんでした。

今では、「父のために何を作ろうか」と母と一緒に楽しくおしゃべりする時間が増えました。

諦めずに前を向いたことで得られたこの穏やかで幸せな日々に、心から感謝しています。



「必ずまた食べられるとお約束はできませんが、1人で諦める前に残された可能性を一緒に探すお手伝いはできます。」

あなたの悩みを聞かせてください。解決できる可能性があるかもしれません。

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