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入院中に「誤嚥性肺炎」はなぜ繰り返されるのか?家族が知っておくべき病院の3つの特徴

  • 執筆者の写真: maedaeasyswallow
    maedaeasyswallow
  • 6月25日
  • 読了時間: 6分

入院中に「誤嚥性肺炎」はなぜ繰り返されるのか?家族が知っておくべき病院の3つの特徴


1. はじめに:病院への「安心」が「不安」に変わる時

「病院に入院したのだから、もう安心だ」。 ご家族がそう願うのは当然のことです。しかし現実には、本来の病気や怪我を治すための入院生活の中で、思いもよらず「誤嚥(ごえん)性肺炎」を繰り返し、結果として「食べる楽しみ」や「自宅復帰」を諦めざるを得なくなるケースが後を絶ちません。医療の現場では、治療の効率や安全管理の裏側で、患者さんの「食べる権利」が損なわれてしまう構造的な問題が存在します。実際に、以下のような悲劇が日々繰り返されています。

  • 大腿部骨折のケース:  自宅へ戻るために歩行訓練が順調に進んでいた矢先、食事中にむせがあり「リスクあり」と診断。リハビリの目的が歩行から嚥下訓練へと変更され、最終的に経口摂取禁止・施設転院となってしまった。

  • がん手術のケース:  難しい手術は見事に成功。しかし、術後の飲み込み評価で不合格となり、胃瘻や鼻チューブ(経鼻経管栄養)を余儀なくされ、二度と口から味わうことなく退院することになった。

  • 無呼吸症候群(CPAP)のケース:  睡眠時無呼吸の治療中に入院先で誤嚥性肺炎を発症。鼻チューブを通したことで、マスクと顔の間に隙間ができ、そこから空気が漏れるため、本来必要だったCPAP(持続陽圧呼吸療法)の治療自体ができなくなった。


なぜ、病気を治すはずの場所で肺炎が引き起こされてしまうのか。

入院生活に潜む「3つの特徴」を解き明かします。


2. 特徴1:姿勢の落とし穴 ― 重力という「物理法則」の無視



多くの病院で、患者さんはベッドの頭を10〜30度ほど上げた「セミファーラー位」という姿勢で大半の時間を過ごします。実は、この姿勢こそが嚥下障害者にとって、誤嚥を招く最大の原因です。この姿勢が選ばれる理由は、嚥下(飲み込み)の安全性ではなく、各診療科の「管理上の都合」が一致している点にあります。

診療科 

セミファーラー位を選択する理由(メリット)

呼吸器科

横隔膜が下がり、肺が広がりやすくなって呼吸が楽になるため。

循環器科

心臓への負担が少ない位置関係を維持できるため。

消化器科

重力を利用して胃の内容物の逆流を防ぎ、窒息リスクを回避するため。 

しかし、この姿勢は「位置エネルギー」の観点から見ると致命的です。口が肺よりも高い位置にあるため、口内は常に肺へ向かう「下り坂」の状態となります。 人間は寝ている間も1分間に約1cc、1日で合計1.5〜2Lもの唾液を分泌しています。対して、喉の奥に安全に溜めておける量は、わずか**3〜5cc(小さじ1杯程度)**に過ぎません。下り坂の姿勢で5分も過ごせば、小さじ1杯の唾液は重力に従って容易に肺へと流れ込みます。病院で推奨される姿勢が、実は「唾液の誤嚥」を物理的に加速させているのです。


3. 特徴2:技術の限界 ― 「断面模型」による仰向け前提の訓練

唾液が肺に入りそうになった時、医療現場で行われるのが「吸引」です。しかし、この技術習得のプロセスにも大きな問題があります



看護師が吸引技術を学ぶ際に使用する訓練用モデル(模型)は、喉の構造が見えるように「真っ二つに割られた断面模型」であることが一般的です。そして、これらの模型を用いた訓練は、基本的に**「仰向け(背臥位)」**の状態で行うことが前提となっています。そのため、現場の看護師は「仰向けや、背中を少し倒した姿勢で吸引する」ことが唯一の正解であると刷り込まれています。ガイドラインにない「誤嚥しにくい姿勢」で吸引を行うことは、知識としても技術としても、今の入院現場では極めて困難なのが実態です。 本来、肺炎予防において重要なのは、肺の入口に溜まったものを「吸う」ことではなく、重力を利用して唾液を「口の外に出す(あるいは肺へ流さない)」姿勢を整えることなのですが、今の教育システムはその視点が欠落しています。


4. 特徴3:概念の壁 ― 「肺炎は老人の友」という諦め



現代の医療現場には、100年以上前の内科医ウィリアム・オスラー博士が残した**「肺炎は老人の友」**という言葉が、悪い意味での「諦め」として根深く残っています。

  • かつての肺炎:  抗生物質がない時代、肺炎は意識を混濁させ、苦痛を和らげながら最期を迎えさせる「安らかな死」への手段と見なされていました。

現代の肺炎:  現在は肺炎治療ガイドラインが存在し、抗生物質で「治るはずの病気」です。しかし、誤嚥性肺炎に関してだけは、「高齢だから繰り返すのは仕方ない」「寿命のようなものだ」という空気が今も現場を支配しています。

ここに深刻な矛盾があります。入院中の「転倒・骨折」は、病院側の過失として数百万円単位の訴訟に発展し得るため、現場は血眼になって防ごうとします。一方で、適切な姿勢(ポジショニング)の工夫で防げるはずの「誤嚥性肺炎」は、なぜか「仕方のない不可抗力」として片付けられてしまうのです。病院は、患者の「生物学的な安全(肺炎予防)」よりも、管理上の「法的な安全(転倒防止)」を優先しがちな傾向にあります。


5. 家族にできるチェックリスト:病院の姿勢を見極める

大切な家族を誤嚥性肺炎から守るため、面会時には以下のポイントを確認してください。

  •   ベッドの角度が常に「10〜30度(セミファーラー位)」で固定されていないか?

  •   「ゴロゴロ」と喉が鳴るたびに、頻繁に吸引を繰り返していないか?

  •   同室の患者さんに、入院してから肺炎を繰り返している人はいないか?

また、病院の姿勢を見極める「リトマス試験紙」として、看護師に以下の質問を投げかけてみてください。  「こちらの病院では、入院中に誤嚥性肺炎になる方は他にもいらっしゃいますか?」この問いに対し、「高齢の方は繰り返すのが普通ですよ」「仕方ないことなんです」という返答が返ってくる病院は、予防に対して消極的である可能性が高い(=要注意)です。逆に、姿勢の工夫やリハビリの視点で具体的な対策を語ってくれる病院であれば、信頼できるパートナーといえるでしょう。


6. 結び:誤嚥性肺炎は「姿勢」で防げる

誤嚥性肺炎は、決して「加齢による避けられない運命」ではありません。むしろ、病院という特殊な環境における「姿勢の慣習」や「組織の諦め」が生み出している側面が多分にあるのです。しかし、これは希望でもあります。重力の法則を知り、正しい「姿勢」を整えるだけで、肺炎のリスクは劇的に下げられる可能性があるからです。 ご家族が今の病院の「当たり前」に小さな疑問を持つことが、大切な方の「食べる楽しみ」を守る第一歩となります。


誤嚥性肺炎を克服した家族の事例










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お問合せ

株式会社甲南医療器研究所

完全側臥位法アドバイザー 前田悟

 
 
 

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